「個人」と「個々人」は、どちらも人を表す言葉なので、違いが分かりにくいですよね。
文章を書いているときに、「個人の考え」と「個々人の考え」は同じ意味なのか、どちらを選べば自然なのかと迷うこともあるでしょう。
この2つは似ていますが、注目している範囲が少し異なります。
「個人」は、組織や集団とは別の一人の人を表す言葉です。一方、「個々人」は、ある集団を構成している一人ひとりに目を向けるときに使います。
違いを知っておくと、会話だけでなく、メールや案内文、仕事で使う文章も自然に整えやすくなりますよ。
この記事では、「個人」と「個々人」の意味や使い方を、比較表や例文とともに分かりやすく解説します。似ている表現への言い換え方や、使うときに迷いやすいポイントも紹介するので、ぜひ文章作りに役立ててください。
「個人」と「個々人」の違いを簡単にいうと

「個人」と「個々人」の違いは、一人の人を独立した存在として見るか、集団の中の一人ひとりとして見るかにあります。
まずは、それぞれの意味を簡単に整理してみましょう。
個人は独立した一人の人を表す
「個人」は、会社や団体、家族などの集団とは分けて、一人の人を独立した存在として表す言葉です。
たとえば、「法人ではなく個人で申し込む」という文章では、会社などの組織ではなく、一人の人として手続きをすることを意味します。
また、「これは個人の意見です」と言う場合は、会社やグループ全体の考えではなく、その人自身の考えであることを示しています。
組織や集団との対比があるときは、「個人」が自然になりやすいと覚えておくと分かりやすいですよ。
個々人は集団の中の一人ひとりを表す
「個々人」は、複数の人がいることを前提として、その集団を構成する一人ひとりに目を向ける表現です。
たとえば、「個々人の希望を確認する」という文章では、参加者や社員などをひとまとめにするのではなく、それぞれの人の希望を個別に確認することを表します。
「個人」が一人の人そのものを指すのに対し、「個々人」には「複数の人を一人ずつ見る」というニュアンスが含まれています。
そのため、全員が同じではなく、考え方や事情、能力などに違いがあることを伝えたい場面で使いやすい言葉です。
個人と個々人の違いを比較表で確認
| 比較する項目 | 個人 | 個々人 |
|---|---|---|
| 基本的な意味 | 独立した一人の人 | 集団の中の一人ひとり |
| 注目する点 | 組織やほかの人との区別 | それぞれの違いや個別性 |
| 前提となる人数 | 一人でも使える | 複数の人がいることを前提にする |
| よく使う場面 | 個人の意見、個人契約、個人名義 | 個々人の判断、個々人の能力、個々人の事情 |
| 言葉の印象 | 日常的で幅広く使える | やや硬く、文章向き |
大まかに分けると、「一人の立場」を示すなら個人、「一人ひとりの違い」に注目するなら個々人です。
ただし、文章によってはどちらを使っても意味が通る場合があります。そのときは、何を強調したいのかを考えて選ぶと自然ですよ。
「個人」の意味と使い方

ここからは、「個人」の意味をもう少し詳しく見ていきましょう。
「個人」は日常会話から仕事の文章まで幅広く使われるため、比較的なじみのある言葉です。
組織や集団と区別するときに使う
「個人」は、会社や団体、チームなどと区別して、一人の人を示すときによく使われます。
たとえば、「会社としての意見ではなく、個人としての考えです」と伝える場合、組織の立場と本人の立場を分けています。
ほかにも、次のような対比で使われることがあります。
- 会社と個人
- 団体と個人
- 家族全体と個人
- チームと個人
- 公的な立場と個人の立場
このように、「個人」は単に一人の人を指すだけでなく、集団に属していても、その人自身を独立して捉えるという意味合いがあります。
身近な例で考えると、「家族旅行の予定は家族全員で決めるが、持ち物は個人で準備する」といった使い方ができます。
家族という集団ではなく、一人ずつ自分の持ち物を用意するという意味ですね。
「個人」を使った例文
「個人」を使った文章には、次のようなものがあります。
- この意見は、会社を代表するものではなく、あくまで個人の考えです。
- 参加費は、グループ単位ではなく個人ごとに支払います。
- こちらの商品は、法人だけでなく個人でも購入できます。
- 仕事用とは別に、個人で使用するメールアドレスを用意しました。
- 今回の発表では、チームの成績と個人の成果を分けて評価します。
- 個人の好みによって、使いやすいと感じる機能は異なります。
- この場所は、商用ではなく個人で楽しむ範囲で利用できます。
例文を見ると、「組織ではなく一人の人」「全体ではなく本人」という意味で使われていることが分かりますよね。
また、「個人の好み」「個人の考え」のように、その人に属するものを表す言い方もよく見られます。
「個人」が使われる代表的な言葉
「個人」は、ほかの言葉と組み合わせて使われることも多いです。
代表的なものを確認してみましょう。
個人の意見
会社やグループを代表した考えではなく、その人自身の考えを表します。
「あくまで個人の意見ですが」と前置きすると、全体の総意ではないことを伝えられます。
個人の判断
周囲から一律に決められるのではなく、本人が自分で判断することを表します。
ただし、「個々人の判断」とした場合は、複数いる人がそれぞれ別々に判断する意味が強くなります。
個人名義
会社や団体の名前ではなく、一人の人の名前で登録や契約を行うことを示します。
この記事では言葉の使い方として触れていますが、契約や手続きの詳しい条件は、利用するサービスの案内を確認してください。
個人用
仕事や共有目的ではなく、一人で使うものを表します。
「個人用のパソコン」「個人用の手帳」など、日常でも使いやすい表現です。
個人差
人によって違いがあることを表します。
「感じ方には個人差があります」のように使われますが、健康や体調に関わる内容では、根拠なく効果を断定しないことが大切です。
「個人」は、組織との区別だけでなく、その人に属する考えや好みを表すときにも使われます。
「個々人」の意味と使い方

続いて、「個々人」の意味を確認していきます。
「個々人」は日常会話よりも、説明文やビジネス文書、案内文などで見かけることが多い表現です。
複数の人を一人ずつ捉えるときに使う
「個々人」は、複数の人をひとまとめにせず、一人ずつ別の存在として捉える言葉です。
たとえば、同じ職場で働く人でも、得意な仕事や生活環境、考え方は異なりますよね。
そのような違いを踏まえて、「社員個々人に合った働き方を考える」と表現できます。
この場合、社員全体に共通する一つの働き方ではなく、それぞれの社員に合わせるという意味です。
「個々人」には、全員を同じものとして扱わず、それぞれの事情や特徴を見るというニュアンスがあります。
そのため、次のような言葉と組み合わせやすいです。
- 判断
- 希望
- 価値観
- 能力
- 事情
- 役割
- 目標
- 考え方
どれも、人によって異なる可能性があるものですよね。
「個々人」を使った例文
「個々人」を使った自然な例文を紹介します。
- 参加者個々人の希望を確認したうえで、日程を調整します。
- 働きやすい環境は、個々人の生活状況によって異なります。
- 一つの方法に決めつけず、個々人に合う進め方を考えることが大切です。
- 個々人が持っている経験を生かせるように、役割を分担しました。
- チーム全体の目標だけでなく、個々人の目標も設定します。
- 物事の受け止め方は、個々人の価値観に左右されることがあります。
- 個々人の事情を踏まえながら、無理のない予定を立てました。
「個人」を使った例文よりも、複数の人の存在が見えやすいのが特徴です。
たとえば、「個々人の希望」と言うと、数人または大勢いる中で、それぞれ異なる希望を持っていることが伝わります。
日常会話では「一人ひとり」のほうが自然な場合もある
「個々人」は間違った表現ではありませんが、少し硬い印象があります。
そのため、家族や友人との会話、子ども向けの案内などでは、「一人ひとり」に置き換えたほうが親しみやすくなることもあります。
たとえば、次の2つを比べてみましょう。
個々人の気持ちを大切にしましょう。
一人ひとりの気持ちを大切にしましょう。
意味はほぼ同じですが、後者のほうが柔らかく、相手に寄り添う印象がありますよね。
一方、社内資料や調査結果など、客観性を持たせたい文章では、「個々人」のほうが合うことがあります。
難しい言葉を使えば文章が立派になるわけではありません。
読者や相手に合わせて、伝わりやすい言葉を選ぶことが大切です。
「個人」と「個々人」の使い分け方

意味を理解しても、実際に文章を書くと迷うことがありますよね。
ここでは、「個人」と「個々人」を選ぶときの判断基準を紹介します。
組織や集団との対比なら「個人」
会社やチーム、団体などと一人の人を分けて考える場合は、「個人」を使うと自然です。
たとえば、次のような文章です。
- 団体ではなく、個人で申し込みます。
- これは会社の方針ではなく、個人の見解です。
- 共有用ではなく、個人用のアカウントを作成します。
これらの文章では、複数人の違いを強調しているわけではありません。
組織や全体から切り分けた一人を示しているため、「個人」が合っています。
集団の中の違いを強調するなら「個々人」
複数人の考え方や事情がそれぞれ異なることを示したい場合は、「個々人」が向いています。
- 個々人の得意分野を生かして役割を決めます。
- 個々人の都合を確認しながら予定を組みます。
- 個々人が自分に合った方法を選びます。
いずれも、全員に同じ対応をするのではなく、一人ずつ違いがあることを前提にしています。
複数いる人を「一人ずつ見る」場面では、「個々人」がしっくりきます。
迷ったときは「一人ひとり」に置き換えて判断する
どちらを使えばよいか迷ったら、「一人ひとり」に置き換えてみましょう。
置き換えて意味が自然に通る場合は、「個々人」を使える可能性が高いです。
たとえば、次の文章を見てください。
個々人の希望を聞く。
一人ひとりの希望を聞く。
どちらも自然ですよね。この場合は「個々人」を使えます。
一方、次の文章はどうでしょうか。
法人ではなく個人で契約する。
法人ではなく一人ひとりで契約する。
後者は意味が少し変わってしまいます。
この文章では、法人と一人の人を対比しているため、「個人」が適切です。
「一人ひとり」に言い換えられるか確認する方法は、迷ったときに使いやすい判断基準です。
似た文章でニュアンスを比べる
「個人」と「個々人」は、同じ名詞と組み合わせられることがあります。
ただし、伝わるニュアンスは同じではありません。
「個人の判断」と「個々人の判断」
個人の判断は、組織や周囲の判断ではなく、本人が判断することを表します。
個々人の判断は、複数の人が、それぞれ自分で判断することを表します。
たとえば、会社の方針ではなく本人に決めてもらうなら「個人の判断」、参加者全員が自分で決めるなら「個々人の判断」が自然です。
「個人の意見」と「個々人の意見」
個人の意見は、組織やグループを代表しない一人の意見です。
個々人の意見は、複数人がそれぞれ持っている意見を指します。
「私は個人の意見として賛成です」と言う場合は一人の立場を示しています。
「会議では個々人の意見を聞きました」と言う場合は、参加者一人ひとりの意見を聞いたことになります。
「個人の能力」と「個々人の能力」
個人の能力は、集団の力ではなく、一人が持っている能力に注目した言い方です。
個々人の能力は、複数の人がそれぞれ持つ異なる能力を示します。
チーム全体の実力と比べるなら「個人の能力」、メンバーごとの得意分野を見るなら「個々人の能力」が合います。
「個人」と「個々人」の言い換え表現
同じ言葉が続くと文章が硬くなったり、単調に感じられたりしますよね。
そのようなときは、意味に合った別の表現へ言い換えると読みやすくなります。
「個人」は「一人の人」や「本人」に言い換えられる
「個人」は、文章の内容に応じて「一人の人」「本人」「その人自身」などに言い換えられます。
たとえば、次のように変えられます。
- 個人の考えを尊重する
→その人自身の考えを尊重する - 個人で申し込む
→一人の名義で申し込む - 個人の判断に任せる
→本人の判断に任せる - 個人が所有するもの
→一人の人が所有するもの
ただし、「個人情報」「個人差」のように、決まった形で使われる言葉は、無理に言い換えると不自然になることがあります。
言い換えたことで元の意味が変わらないか、文章全体を読み直しましょう。
「個々人」は「一人ひとり」や「各人」に言い換えられる
「個々人」は、「一人ひとり」や「各人」と近い意味を持っています。
ただし、文章から受ける印象には少し違いがあります。
| 表現 | 印象 | 使いやすい場面 |
|---|---|---|
| 個々人 | 客観的でやや硬い | 説明文、報告書、ビジネス文書 |
| 一人ひとり | 柔らかく親しみやすい | 日常会話、案内文、読み手に寄り添う文章 |
| 各人 | 簡潔で事務的 | 指示文、規則、短い案内 |
たとえば、「個々人の状況に配慮します」は、落ち着いた客観的な文章です。
「一人ひとりの状況に寄り添います」とすると、温かみのある印象になります。
「各人で準備してください」と書けば、短く明確な指示になります。
文章の硬さに合わせて表現を選ぶ
言葉は、正しいか間違っているかだけで選ぶものではありません。
文章の目的や読む相手に合わせることも大切です。
たとえば、子どもや幅広い年代の人が読む文章では、「個々人」より「一人ひとり」のほうが理解しやすいことがあります。
反対に、調査結果や業務報告など、感情を抑えて客観的に書きたい場合は、「個々人」がなじみやすいでしょう。
次のように考えると選びやすくなります。
- 柔らかく伝えたい:一人ひとり
- 客観的に説明したい:個々人
- 一人の立場を示したい:個人
- 簡潔に指示したい:各人
意味が似ていても、文章の雰囲気に合う表現を選ぶことで、読みやすさは大きく変わります。
「個人」と「個々人」に関するよくある疑問
最後に、「個人」と「個々人」を使うときに迷いやすい疑問をまとめます。
「個々人それぞれ」は意味が重なる?
「個々人」には、すでに「一人ひとり」「それぞれの人」という意味が含まれています。
そのため、「個々人それぞれ」は意味が重なって聞こえることがあります。
たとえば、次の文章です。
個々人それぞれが希望を伝えてください。
意味は伝わりますが、次のどちらかにするとすっきりします。
- 個々人が希望を伝えてください。
- それぞれが希望を伝えてください。
同じ意味を持つ言葉を重ねすぎると、文章がくどく見える場合があります。
ただし、話し言葉では強調のために使われることもあり、必ずしも意味が通じない表現ではありません。
ブログや案内文では、読みやすさを優先して整理するとよいでしょう。
「個々人の方々」は自然な言い方?
「個々人」と「方々」は、どちらも複数の人を意識させる表現です。
そのため、「個々人の方々」とすると、やや回りくどく感じられることがあります。
次のように言い換えると自然です。
- 個々人の意見
- 参加者の方々の意見
- 一人ひとりの意見
丁寧に書こうとして「方々」を足したくなることもありますよね。
しかし、「個々人」自体が人を示す言葉なので、無理に敬意を加えようとせず、文章全体の表現を整えるほうが自然です。
「個人個人」と「個々人」はどう違う?
「個人個人」という言い方も、一人ひとりを表す目的で使われることがあります。
意味としては「個々人」と近いものの、文章では「個々人」や「一人ひとり」のほうが一般的で、読みやすいでしょう。
たとえば、次の文章を比べてみます。
- 個人個人の考えを尊重します。
- 個々人の考えを尊重します。
- 一人ひとりの考えを尊重します。
1つ目でも意味は伝わりますが、少し話し言葉に近く、言葉を繰り返している印象があります。
客観的な文章なら「個々人」、柔らかく伝えるなら「一人ひとり」が使いやすいですよ。
「各個人」と「個々人」は同じ意味?
「各個人」と「個々人」は、どちらも複数いる人を一人ずつ捉える表現です。
意味は近いですが、使われ方には少し違いがあります。
「各個人」は、一人ずつを順番に区別するような印象があり、事務的な文章や制度の説明などで使われることがあります。
一方、「個々人」は、それぞれの考え方や事情、能力など、個別の違いに注目するときに使いやすい表現です。
たとえば、次のように使えます。
- 書類は各個人で保管してください。
- 個々人の価値観を尊重することが大切です。
「各個人」は行動の単位を一人ずつ分ける印象、「個々人」は人による違いを見る印象と考えると分かりやすいでしょう。
ビジネス文書ではどちらを使えばよい?
ビジネス文書でも、基本的な使い分けは同じです。
会社や部署などの組織と、一人の社員を分けて考える場合は「個人」を使います。
- 会社の見解ではなく、個人の意見です。
- 業務用とは別に、個人用の端末を使用します。
社員や参加者など、複数人の事情や能力に目を向ける場合は「個々人」が向いています。
- 社員個々人の目標を設定します。
- 個々人の状況に応じて、作業を調整します。
ただし、相手に分かりやすく伝えることが最優先です。
社内向けの案内文であっても、「個々人」が硬すぎると感じる場合は、「一人ひとり」や「それぞれ」に言い換えて問題ありません。
ビジネス文書では難しい言葉を選ぶより、意味が誤解なく伝わる表現を選ぶことが大切です。
まとめ|一人の立場なら「個人」、一人ひとりなら「個々人」
「個人」と「個々人」は、どちらも人を表しますが、言葉が向いている場面は異なります。
「個人」は、会社や団体などと区別された一人の人を表す言葉です。「個々人」は、複数いる人の中から、一人ひとりに目を向けるときに使います。
使い分けに迷ったときは、次のように考えてみてください。
- 組織や集団と一人を分けるなら「個人」
- 複数人の違いや事情を見るなら「個々人」
- 「一人ひとり」に置き換えられるなら「個々人」
- 柔らかく伝えたいなら「一人ひとり」も使える
たとえば、「個人の意見」は組織を代表しない一人の意見を表します。
一方、「個々人の意見」は、複数の人がそれぞれ持っている意見を意味します。
似た言葉だからこそ、文章の中で何を強調したいのかを考えることが大切ですよね。
意味が重なる言葉を重ねたり、必要以上に硬い表現を使ったりすると、読みにくくなることがあります。
言葉の正しさだけにこだわらず、読む人にすっと伝わるかどうかも確認してみてください。
「一人の立場なら個人、集団の一人ひとりなら個々人」と覚えておけば、文章を書くときに迷いにくくなります。
メールや案内文、ブログなどで言葉を選ぶ際には、今回紹介した比較や例文を参考に、場面に合った自然な表現を使ってみてください。
